PBP2015の話(1/3):前半
気がついてみると2018年ももう終わり。来年はPBPの年です。
2015年のPBPは、初めて参加した1200kmブルベでもあり、とても思い出深いものでした。今更ですが、思い出しついでに書き残してみることにします。
2015年当時にEvernoteに書いておいたメモ、ほぼそのままの内容です。
受付〜スタート前
サン=カンタン・アン・イブリーヌのベロドロームの前日受付の様子。
広いベロドロームの中、国別ジャージを来た世界各国のランドヌールの笑顔が印象的でした。
スタート地点までは長蛇の列。20分おきのスタートですが、並ぶのが遅いとかなり後方まで行くことに。
ヴィレンヌ ラ ジュエル(220km地点)まで 220km / 区間速度21.2km/h
スタート直後は気分が高揚しているので、40km/h前後のペースで軽快に進みます。ベロドロームの前から交通規制になっており、街中を進むと景色が開けた場所へ。
街路樹の中をご機嫌で進んでいると、ペダル付近にガッという音。足に何か当たったようですがタイヤで何かを踏んだ感じはしない。実はこの時、etrex20が振動で外れて落ちていたのでした。スタートからわずか30分、10〜15km地点でのことでした。
しかし、スタート直後でアドレナリン出まくりの興奮状態の中、etrexが落ちたことには気づかず、また道を確認するためにスピードを緩めるような気分でもなかったのでそのまま走行。etrex20は元々予備用で、メイン機のGarmin Edge810があるので問題は特になし。
etrex20は買ったばかりで、これが初投入でした。PBPに初物を持ち込むべきではなかったかも。
おなじG組のひであさんが自分のペースに合わせてくれて、しばらく一緒に楽しく走ることに。しかし、ひであさんの(流しめの)ペースについていくのに多少無理があったのか前日のパリ観光70kmライドがたたっているのか、余裕を持って走っているつもりなのに62km地点で両足が攣り気味に。
PBPの中で最も良く撮れた写真の一つ。タンデムのご夫婦にご挨拶してお互い写真を撮りあい、自己紹介カードをいただきました。とってもいい笑顔。名刺的なものを持っていくとコミュニケーションがスムーズになるかも。
20:34。初めてのカフェがあったので止まって小休止。カフェのおじさんにフランス語でなんか絡まれる。すごい笑顔で肩叩いてるけど何を言ってるのかわからない..。サンドイッチとコーラを頂きました。コーラは半分くらいしか飲めなかった、ような。
再開してまた進む。帰りも経験する緩い登りと街のある丘の繰り返し。21:30でもまだ明るいが、22時には暗くなる。足が攣り気味になってからはペースをある程度落として進んでいました。
23:30。140km地点、食事ポイントのモンターニュ オ ペルシュに到着。スタートからこの区間がPBPの中で最長でした。ドリンクとサンドイッチの屋台のようなものがありますが、吸い寄せられるように綺麗な食堂へ。PBPのPC停止時間は長くなりがちなので、屋台で買って短時間ストップにするのが正解でした。パスタを食べているので1時間は滞在していたはず。疲れていたのか写真はなし。
リスタート後の17日1:30。休憩している時に暗闇の中を進んでくるランドヌールを撮影しようとした写真。いつカメラを向けてもこのような写真が撮れるほど沢山の自転車が走行していました。
この時点で、信号がなくアップダウンのつづく地形にかなり疲労してしまっていました。気温は11度。アームウォーマー&レッグウォーマー&レインジャケットでもまだ寒い。ツイートによれば、この後PC1までに道端で二回寝ていたようです。
なんとか4:45にヴィレンヌ・ラ・ジュエルに到着。ここまでは一応予定通りのタイムで貯金は3時間。このPCは行きも帰りも素晴らしい歓迎ぶりでした。
食事はパン二つとオランジーナのみ。がっつり食べる気になれなかったので、この時点で胃腸の調子が悪かったのかもしれません。普段のブルベなら、23時にサンドイッチを食べ、走り続けて5時を迎えたのならコンビニでカツカレーをほおばっていてもおかしくないのに。
PCで食事して多少仮眠。おそらく1.5時間のストップ後、リスタート。多分6:15頃。
フージェール(309km地点)まで 89km / 19.1km/h
6:30には明るくなる。が、濃霧。割りと軽快に進んでいるはずですが、最初の区間で足にきている状態。最初の区間からずっと、心拍が120台からなぜかあがらず、130程度で息が切れている。おかしい。足にもきていて踏めないし、ペースがちっとも上がらない。しかし、体力的には余裕がある。(あとになって思えば、これはおそらくハンガーノックでした)
貯金があることもあり、この時点ではまだ気持ちには余裕がありました。朝が来ると明るく、フランスの街並みや景色は美しく、テンションもあがります。
7時頃、私設エイドでホテルで同室のKさんと再会。ここでは小さなケーキのようなものを食べた気がしますが、やはりがっつり食べる気になれませんでした。
「今回は向い風で前回よりスピードが出ずにつらい」とはAJ神奈川のMさんのコメント。
エイドからはしばらくKさんと共に進むものの、Kさんは速くすぐについていけなくなりました。後にKさんのfacebookによれば、「体調が悪そうに見えた」とのこと。
10:30にフージェール到着。この区間では途中で寝たりはしていないはず。
食堂でクロワッサン2つとパスタを頂く。鶏肉はパサパサでした。サラダとメインがパスタパスタでかぶってしまった。でもカロリーは十分。
この時点でもまだ貯金は3時間ある。
タンテニアック(363km地点)へ 54km / 16.3km/h
11:43、1時間以上の停止後、フージェールを出発。話に聞いていたとおり、ストップ時間がやたらと長い。この後、アップダウンの連続でどんどん足が削られていきます。この区間から毎回ネットにつないでチェックインするのを諦めました。モバイルルータを起動してネットに繋ぐ、そんな余裕はもうなかった。
途中、A.C.ルデアックの安定したプロトンに乗ることができ、楽に距離が稼げました。このままずっと乗っていけるかなと思ったが彼らは途中で休憩してしまい、あまり長い時間は楽ができなかった。
このような畑を見ながら走ります。ゆるやかなアップダウンがずっと続く。
13:31、スーパーでオレンジとオレンジジュースを買って食べる。この時は無性にフルーツが食べたかった。
14:30タンテニアック到着。まだ、予定通り。
フロントの空気圧が甘かったのでポンプを借りて補充。時間を気にしてここでは食事は簡素に済ませたような気がします。15:10にはリスタート。停止時間を40分に収められたことに満足。(普段のブルベではありえないほど長い時間ですが)
ここでも3時間の貯金があります。しかしこの区間は15km/hで走っていたため、もはや貯金が増えていない。
ルデアック(448km地点)へ 85km / 13km/h
タンテニアックを出た後、カルフール(スーパー)に寄ったのですが、ここで買ったサンドイッチを食べた後、胃のむかつきがおきはじめた模様。合わなかったのかもしれない。軽い吐き気もあり、何かを食べる気が起きない。ブルベでは初めての経験でした。
ケディアック手前で、2015年のAJ福岡ヘブンウィークで一緒に走ったUさんに出会い、しばらくご一緒させていただくことに。けだるい眠気がずっとあり、いまいち力が入らない状態が続いていましたが、Uさんと話しながら進むことで気分を紛らわすことができました。とても、ありがたい。
17:00にはリスタート。再びUさんと共にルデアックに向かう。ペースメーカーがいるというのはこんなに楽なものか、という感じ。Uさんは途中で休憩され、また単独で走り始めます。極めてスローペースではあるものの、徐々に最初の目的地ルデアックが近づいてくる。次第に気分も高まってきました。
景色を楽しみながら20:30ルデアックに到着。「LOUDEAC」の看板を見た時の嬉しさは言葉にならない。到着時の貯金は変わらず3時間。
そして仮眠。頼んでおくと指定の時間に起こしてくれるシステム。17日23時に起こしてくれと伝えて就寝。
(ちなみにこれは当てにならず、23時をかなりまわってから起こされました。)
食事で時間が取られることを嫌ってルデアックでは食堂をパス。ここの食堂は非常に混んでいて長い行列ができていました。
ケディアックのパンの残りを食べて0時頃にリスタート。このあたりから明らかに補給が足りていないのに、それに気づいていない。大量に持参したカロリーメイトも、ゴールまでの合計で3箱しか消費しておらず、ほとんど補給できていませんでした。
カレ・ブルゲ(526km地点)まで 78km / 10.8km/h
ルデアックの仮眠所で2時間ほど寝たものの、深い眠りを得られずうまくリフレッシュできていない状況。国内での600kmブルベのときは、もっとうまく回復できていたのに。
この後は深夜。眠くなる時間です。このあたりから断続的なマイクロスリープで蛇行がひどくなっていきました。何度も何度も道端で仮眠することを繰り返しながら、サン ニコラ デュ ペルムへ到達。
この次のPCはたったの33kmしかないということで、ここでもきちんと食べていませんでした。
途中で、ルデアックのドロップバッグに入っていたモバイルバッテリーを交換し損ねたことに気づきます。
10km地点で落としたためetex20はなく、頼りにできるのはGarmin Edge810のみ。モバイルバッテリーは既に空。このままでは、Garminのバッテリーはドロップバッグのある復路のルデアックまで持たない計算です。
しかし、サン ニコラ デュ ペルムのバイクメンテショップで頼み込んだところ、なんとモバイルバッテリーを充電してくれました。(しかもこの後の復路でも充電してくれました。)わずか30分の充電ですがGarminにはそれで十分。なんとか持ちました。まさに神対応です。ショップの店員さん、ありがとう。
この後はバッテリーの無駄遣いができないためiPhoneの音楽再生も控え、眠気対策にアルバム一枚分を歌いながら走っていました。闇夜のフランスの道を歌いながら走るのは気持ちよかった(B’zの「闇の雨」)。心拍数は低く、歌えるくらいの余裕がある程度にしか動いていない状態でした。
どうにか5:44にカレ・ブルゲに到着。食堂の机で仮眠。少しだけのつもりでした。
これは明るくなった後、リスタート前の7:41の写真。ここでは2時間のストップになりました。
ここでついに貯金がゼロになりました。ルデアックでの休憩の後、道端で寝ながら走った区間のペースが明らかに悪い。ルデアックでうまく眠れなかったことが響いてきました。ここでもまだ、カロリーが足りていないことには気づいていない。
ブレスト(614km地点)まで 88km / 11.4km/h
アップダウンの続くコースの過酷さから疲労感は凄まじく、常に眠気もあり、辛さはピークに達していました。天気が良く、美しい景色だけが救いです。
パワーが出ず、ふらふら走っていた時に立ち寄った屋台。10:41頃でした。フランスパンにソーセージを挟んでケチャップをつけただけのものが、最高にうまい。時間が気になるので走りながら食べましたが、最後の一口まで勿体無いほどでした。
食べ終わると同時に少し力が出てきます。このあたりで、軽いハンガーノック状態だったことをようやく自覚。PBPでのスピーディかつ必要十分な補給は本当に難しかった。コンビニが大量にある日本とは全く条件が違います。
ブレストに行くんだ。ただそれだけを唱えて、限界が来ている体でペダルを踏み続けます。ブレストを見ずに、ここで終われない。両足のふくらはぎがおかしい。歩くのもきつい。常に倦怠感のような眠気。でも、ここでやめるわけにはいかない。
正午頃、大西洋が見える。思わず隣のランドヌールに海だ!と指差しながら叫ぶ。初めて見る大西洋、そしてついにブレストの街が見えてきた。
12:30ブレスト到着。PCクローズの数分前、ギリギリで間に合いました。ここで貯金はゼロに。
疲労、空腹感、それに睡魔。限界が来ていたので、ブレストでは1時間の食事の後、倒れ込むように芝生に寝転んで爆睡すること2時間。
起きたのはおそらく16時頃。なんとPCクローズ時刻の3時間後です。もうアウト。ここで時間内にゴールできる可能性は消滅しました。
ブレストにはTGVが通っているので、これに乗れば今日中に帰れてしまいます。夢だったブレストにはたどり着くことができた。今回はこの辺が潮時でしょう。
しばらく悩んだ後、DNFを決意してブレストの駅に向かうことにしました。