PBP2023 #6 走行編 Loudéacまで (〜782.2km)
Brest到達
Saint-Nicolas-du-Pélemでの仮眠後は走ったり寝たりの繰り返しでスローペースで進み、Brest到着時の貯金はわずかに1時間でした。ショートストップで再開したいところですが、到着直前に発生した右足の異常を考えるとしばらく休憩したほうが良さそうです。
幸いなことに右足の痛みはペダルを回すときだけで、歩く際は痛みはほとんどありませんでした。手早くコントロールでのサインを済ませて食堂に向かいます。
長めに休憩すればきっと足の痛みもおさまってくれるはず。
600km以降はPCクローズ時刻が緩和されるのでペースを落とすことができます。Brestのクローズ時刻には間に合った。残りの行程はイージーゲームのはず。時間をとって食事休憩をしても問題はないはずです。
ブレストへの到達はルデアック以上に達成感があります。この地にまた帰ってくることができてよかったという嬉しさもあり、緊張感が薄れてすこしぼーっとしていた気がします。
気がつくと到着から1時間以上が経過。出発しようとしたところ、トイレに列ができており更に時間がかかってしまいました。
結局Brestは11:30に出発。1時間半も停止していました。
右膝の故障。Carhaix-Plouguerまで(604.3km→697.1km)
Brest出発時点でPCクローズ時刻を30分オーバーしており足には異常があるまずい状態でしたが、「Brestまでたどり着ければあとはなんとかなる」という思いが強かったのか、どうも緊張感を持てません。
PCを出てもすぐにスーパーに入って補給食を買ったり、のんびり記念撮影をするなど時間にルーズになっていました。
Brestのプルガステル橋を見ると、ゴールしたかのような気持ちになるから不思議です。
右膝トラブルの状況
走り始めるとすぐに右足の異常が全く解消されていないことがわかります。
Brest到着前と変わらず、ビンディングペダルにクリートをはめるだけで右足の広範囲に激痛が走ります。右足をペダルに乗せずにぶらぶらさせながら走ったり、クリートをはめずにそっとペダルの上に足を置いて力を入れずに回したりといろいろと試行錯誤。
まだゴールまでは600kmも残っています。対処法が見つからず、痛みがおさまらないようならDNFも考えなければなりません。
原因
いろいろと試すと、どうやら右足に力を入れずに股関節を使って回すと痛みが出ないことがわかってきました。股関節を使って回すのはペダリングの基本ですが、今回はどうやら膝を使いすぎる回し方をしてしまっていたようです。序盤にトレインに乗ってオーバーペースで走っていたことが影響したのかもしれません。
おそらく今回の右膝トラブルの直接原因は、今回のPBPで初めて使用したアピデュラのトップチューブバッグだと思われます。トップチューブバッグに右膝が当たるので無意識的に右膝を外に広げた歪んだペダリングをしてしまったようでした。膝に当たるのが嫌でこれまでトップチューブバッグはほとんど使ったことがないのですが、今回はカメラや補給食を余分に入れる容量が欲しくて渡航直前に購入したのです。
この普段使っていない装備をテストなしでいきなり実戦投入してしまったことが裏目に出たようです。
歪んだペダリングの結果、腸脛靱帯炎(いわゆるランナー膝)を発症していたのが600km地点での状況でした。
対処
痛みは引くことなく継続していますが、走りながら試行錯誤した結果、なんとなく原因と対処法が見えてきました。
登りの時は膝周りの筋肉を使わず股関節で回す癖がついているので、登りの区間になると痛みがなく普通に回すことができるようです。平坦区間になると膝周りの筋肉を使っているようですぐに痛みが出ることがわかりました。
となれば、登りのほうがありがたい。他の参加者はBrest以降のアップダウンがつらいと言われていましたが、登りのつらさよりも平坦区間の足の痛さの方がはるかにつらい状況です。少しでも平坦区間があると痛みが出て足を止めたりしていました。
「はやく登り区間にならないかなあ」
「この後の区間が全部登りならいいのに・・・」
というようなことばかりを考え、右足の痛みがでないように股関節を使うことに意識を集中していたので、Brest以降はどんなコースだったのか、どのくらいアップダウンがあったのかよく覚えていません。
この時は、とにかく膝をかばいながら前に進むことに必死になっていました。
Carhaix-Plouguerへ
足のことばかりを考えながら走っていたら突然コントロールが出現。
15:07 658.3km地点 シークレットコントロール Playben
今回はPlayben(プレバン)という街にシークレットコントロールがありました。2015年・2019年のシークレットはすべてWelcome Pointとしてキューシートに記載されていましたが、2023年は往路・復路共に予告なしのシークレットがありました。過去の大会で不正行為があったのかもしれません。
思いがけず現れたシークレットで小休止してすぐにリスタート。
足の痛みを抱えながらだましだまし進んだため、BrestからPlaybenまでの52kmは3時間半もかかってしまいました。ほぼ15km/hペースです。実際、この区間は最高速度20km/hも出せないようなコンディションでした。
17:29 697.1km地点 PC7 Carhaix-Plouguer
Carhaix-Plouguerには17時半に到着できました。
この頃には痛む足との付き合い方がわかってきて少しずつペースがあがり、18km/h前後で走行できるようになっていました。
Loudéacまで (697.1km→782.2km)
PC7到着時点でどうにか1時間ほどの貯金が作れていますが、この日の睡眠時間を稼ぐために先を急ぎたいところ。32分ほどの停止時間で足早にリスタート。
Carhaix-Plouguerにボトルを置き忘れてしまい、代わりのものをGouarec(グアレック)で購入。店頭には置いてなかったのですが、話すと奥から取り出してくれました。
Gouarecでは30分程度休憩。
この時、20時半でも気温は21度あり暑くもなく寒くもない状況でした。この日の最高気温は33度。日本の猛暑に比べれば遥かにすごしやすい環境だったと言えます。
1時間ほどのろのろと走行していると、PCのようなゲートが現れました。
「このパターンは初めてだ」
というばるさんの声が前方から聞こえます。またシークレットかと思いましたが、大規模な私設エイドでした。
この後もスローペースで走り、23:07に782.2km地点のPC8 Loudéac(ルデアック)に到着。
事前の計画ではこの日は次のQuédillac(ケディアック)まで進んで宿泊する予定だったのですが、足の調子が悪いのでここで眠ることにします。もう少し早く到着して睡眠時間を確保したかったのですが、PCクローズ時刻まで約3時間あるのでなんとか仮眠はとれそうです。