PBP2023 #5 走行編 Brestまで (〜604km)
往路Loudéacでの失敗
ドロップバッグのある最大のPC、Loudéac(ルデアック)には19時に到着することができました。クローズ時刻の約5時間前。走行計画より2時間も速いペースです。
Loudéacにたどり着くと、いつもなんとも言えない達成感を感じます。つい一休みしたくなるところですが、まだ陽は高く、眠気もないので仮眠は次のSaint-Nicolas-du-Pélemでとる予定。Loudéacでの滞在時間はなるべく短時間にとどめて睡眠時間を確保したまま次に向かいたいところです。
駐輪場から見える場所に日本国旗と方向指示があったためドロップバッグ置場は容易に見つけられました。番号順に並べられているので自分のバッグもすぐに発見。
Loudéacでやるべきことは以下。
- シャワー&着替え
- 食事、水補給
- モバイルバッテリー、ライトのバッテリーの交換
- 補給食を取り出してフロントバッグに収納
- 防寒装備を取り出してサドルバッグに収納(厳冬期グローブ・冬用ビブショーツ)
時間がなければシャワーは省略するつもりでしたが、余裕があったのでドロップバッグから石鹸とタオルを取り出してシャワー室に向かいます。渡された紙タオルはあまり吸水性のないものでした。マイクロファイバータオルを持参すると重宝しそうです。
シャワーを浴びてすっきりしたところで手際よくタスクをこなしたいところなのですが、どうも頭が働かず、緩慢な動きしかできない。Loudéacにたどり着いたという安心感と達成感、それに400km以上走った疲労が加わって、判断力が極度に低下している状態です。
やるべきことを手順化・リスト化して印刷しておけばよかったのですが、
「えーと、次に何をするのだったっけ・・・?」
と、判断力の低下している状態で一つ一つ考えながら作業したので、非常に効率が悪い時間の使い方になってしまいました。
やるべきことはコントロールに行って、シャワーを浴びて着替えて、ドロップバッグの中身を取り出して装備交換するだけなのに、無駄の多い手順でドロップバッグと自転車との往復を繰り返し、気がつけば到着から1時間以上が経過しています。
また、PCに1時間も滞在しているのに、何も食べず何の補給も済ませていませんでした。
ふと時計を見て時間が経ちすぎていることに気づき、慌ててドロップバッグの中にあったカロリーメイトを食べて補給を済ませます。カロリーメイトは小さいのに栄養価が高くしかも栄養バランスが良いので、短時間で補給する手段としてとても便利。
時間のかかる食堂や売店に行くことは諦めてこれ以上の時間のロスを避け、なんとか20:38にリスタート。
結局、満足に休憩も補給もできていないのに1時間半も停止してしまいました。今回のPBPで最大のミスだったと言えます。
Loudéac到着前には「このままいけばSaint-Nicolas-du-Pélemで4時間くらい眠れるかもしれない」と楽観的に考えていましたが、そこまでの仮眠時間の確保は難しそうです。とにかく次のWP、仮眠場所のSaint-Nicolas-du-Pélem(サン=ニコラ=デュ=ペルム)にたどり着いてなるべく長い睡眠を実現したいところです。
Saint-Nicolas-du-Pélemまで(435.3km→482.0km)
Loudéac以西のブルターニュ地方の冷え込みは激しく、2015年・2019年共に明け方の気温は5度前後でした。往路Loudéacで防寒装備に着替えて気温の低下に備えることがPBPのコツの一つだと考えています。
2023年は全体的に気温が高く、往路Loudéac出発時点の気温が23度もありました。念のため、アームカバーとレッグカバーを冬用に変更して走行を開始。すぐに気温が下がり始めますが、10度台後半で予想よりもかなり暖かい。私は寒さに弱いのでとても走り易い気温でした。
寒さはないものの、LoudéacからSaint-Nicolas-du-Pélemの間はそれなりにアップダウンがあり、疲労の蓄積もあってペースがあがりません。スローペースで進み、どうにかSaint-Nicolas-du-Pélemまであと数キロまで近づいてきたというところでコントロール表記が現れました。
あと数キロあるはずですが、以前もサン=ニコラがシークレット・コントロールだったのでサン=ニコラに到着したものと勘違いしてしまいます。バイクを止めてチェーンロックをかけ、コントロールでサインをもらい、食堂や仮眠所を探しますが見つからない。
おかしいと思いスタッフに確認すると、
「食事と仮眠所は7km先のSaint-Nicolas-du-Pélemですよ」
と言われ、始めてここがサン=ニコラではない別の街だと気づきました。ここはCanihuel(カニユエル)という街だったようです。あわててすぐにリスタート。
23:41 482km地点 WP Saint-Nicolas-du-Pélem
23:41にサン=ニコラに到着。到着時点でクローズ時刻との差は3時間20分ほどでした。
シークレットでのタイムロスもあり、LoudéacからSaint-Nicolas-du-Pélemの56.8kmに3時間もかかっています。Loudéac出発時点から貯金を稼ぐことはできませんでした。
Loudéac到着時の5時間マージンをうまく使えていれば、5時間以上の貯金を確保してサン=ニコラに来れたはずなのですが、Loudéacとシークレットでのタイムロスが重なり仮眠時間を減らす結果になってしまったことは残念です。
Saint-Nicolas-du-Pélemは、前回仮眠中に財布を盗まれてDNFに至った因縁の場所です。この街をノートラブルで乗り越えることは4年間の悲願でした。
今回は前回のように食堂で眠るのではなく仮眠所を使い、財布は盗まれないようにしっかりと懐に入れて寝ることに決めていました。到着後すぐに仮眠所に行き、そのまま倒れるように眠ります。
0時頃に仮眠所に入って2時すぎに起床。結局、睡眠時間は2時間ほどでした。クローズ時刻は2:55だったのでもう少し寝ても良かったかもしれません。
気をつけていたので今回は何も盗まれることはありませんでした。
起きたら食堂に移動してカロリーを補給します。睡眠時間が短くこの先が少々不安ですが、午前3時頃にリスタートしました。
Brestまで(482.0km→604km)
睡眠時間の確保を重要視してクローズ時刻ぎりぎりまでサン=ニコラに滞在したので貯金はゼロに戻っています。
Saint-Nicolas-du-Pélem出発後の区間は前回大会で気温が6度まで低下し、厳冬期グローブを着用してしのいだとても寒い場所です。今回も気温の低下を懸念していましたが、13度までしか下がらなかったため秋用のフルフィンガーグローブで問題なく走行できました。ほとんどの人は指ぬきグローブで対応していた気がします。
4:27 514.9km地点 PC5 Carhaix-Plouguer
4:27、PCクローズの38分前にCarhaix-Plouguer(カレ=プルゲール)に到着。ややぎりぎりですが間に合いました。仮眠後の貯金の少ない時間帯をどうにかしのぐことができて一安心です。パンを買ったりして30分程度の停止でリスタート。
Carhaix-Plouguerまではなんとか走れたのですが、この後、断続的な眠気に襲われることになります。Loudéacでのタイムロスがサン=ニコラでの睡眠時間の短縮に繋がり、その結果この区間にツケが回ってきた構図です。
ときにはバイクにまたがったまま停止してハンドルに突伏し、時には10分だけ道端に倒れ込むなど、マイクロスリープに襲われながら走る状態になってしまいました。私設エイドがあるとすぐに休憩してしまったりとなかなか前に進みません。
「眠い。また眠ろうか。いやもう少しだけ走ろうか・・・。」
そんなことばかりを考えながら、Brestに向かう峠を登っていたところ
峠の山腹に布団と椅子を貸してくれる私設エイドがありました。なんとありがたい!!
道端に倒れての仮眠に比べて椅子に座って布団に包まる仮眠がなんと快適なことか。布団の暖かさが身に沁みます。短時間の睡眠だったと思いますが、効率よくリフレッシュすることができました。私設エイドには本当に頭があがりません。
一眠りすると調子がでてきました。次第に走行ペースもあがっていきます。20分後には大きめの街で休憩することなく駆け抜けていけるほど元気になっていました。質の良い仮眠は偉大です。
ここまでくれば折返し地点のBrestは目と鼻の先です。風景も山と畑から市街地に変わり、またBrestが見られるという期待感が膨らんでいきます。スピードも戻っており快調に走れていました。
ところが、あと7kmほどでBrestというところで、突然右足に激痛が走りました。
右膝を中心に右足の広範囲に酷い痛みがあり、痛みでビンディングペダルをはめることができません。何が原因なのかはわかりませんが、Brestまではあとわずか。
とりあえず右足をペダルから外し、左足のみでペダルを回してどうにかBrestの街に入っていきました。
この時、右足は痛く全く使えない状況ですが、トラブルについて深く考えることはせず、またBrestにたどり着けたという喜びに浸っていました。
しかし、思っていた以上に右足のダメージは深刻だったのです。