ブレストまで何マイル?
ブルベ中心のロードバイクの走行記など

PBP2023 #10 振り返り〜PBPの攻略法

10月 14th 2023 in ブルベ

Pairs-Brest-Pairs Randonner2023への挑戦は87時間58分で完走という結果で終えることができました。

PBPの参加は今回で3回目。簡単に完走できたわけではないのですが、これまでで最も安定して走ることができました。三度も走り、おぼろげながらPBPを完走するコツのようなものが見えてきた気がします。

PBPブログの最後のエントリーとして、全体の振り返りと自分なりの攻略法を書き残して置こうと思います。

結果分析

ペース・マージン推移

区間ペース・停止時間・仮眠所での睡眠時間
※区間速度はPCでの停止時間を含まない「ネット平均速度(km/h)」。

上記は全体の走行ペースと仮眠所での睡眠時間。夜スタートなので5日間の行程です。(ヴィレンヌまで1日目扱い)

走行ペースの問題点は2箇所。

  1. ルデアックとカニユエルでのタイムロス(黄色背景)
    • 往路ルデアックへの到着時には4時間52分の貯金があるが、2日目の仮眠ポイントであるサン・ニコラでは貯金が3時間14分に減っている。
    • 原因はルデアックとカニユエル(シークレット)でのタイムロス。
  2. 膝故障によるブレストでのタイムロスとその後のスローペース(オレンジ背景)
    • 600km地点での右膝の故障により、ブレストに1時間32分も滞在して26分の借金スタート。
    • その後の区間は足の不調から速度が低下(全区間で最も遅い15km/hになっている)

この結果、3日目復路ルデアック到着時の貯金は2時間47分しか確保できませんでした。

復路ルデアックは睡眠時間の確保を優先したために1時間の借金スタートになり、その後の復路タンテニアックはPCクローズの10分前に到着という大ピンチの状態に陥りました。

貯金の推移

上記は貯金の推移をグラフ化したものです。縦軸はPCクローズに対する貯金時間、横軸は経過時間。赤線が貯金の推移、緑の帯は仮眠所での滞在時間。赤い帯は仮眠していないのに長時間停止してしまったPCです。

全体的にブレストより左側の方が山が高く、往路よりも復路は貯金を確保できていないことがわかります。

1泊目のヴィレンヌ到着時点では4.5時間の貯金がありますが、2泊目以降は仮眠所到着時の貯金が3時間前後しかありません。1泊目も貯金を残すために短時間睡眠にしたため、結局4泊とも2時間〜2時間半程度しか眠っていない状態でした。

スタート前に昼過ぎまでホテルで仮眠をとっていたので、1泊目は短時間の睡眠で問題ないのですが、2泊目以降は毎日3時間以上眠りたかったところです。前述の通り、ルデアックでのタイムロスが2泊目の睡眠時間を削り、足の故障の影響で3泊目も睡眠時間を確保できませんでした。

仮に往路ルデアックとカニユエルで素早く動けていれば5時間以上の貯金を持ってサン・ニコラに到着できたはずであり、ここで4時間の睡眠がとれていれば後半かなり楽になったと思われます。

前回大会との比較

PCクローズ時間の差


PBP2019とのPCクローズ時間の差

上記はPCごとの15km/hペースでの仮想クローズ時間と、実際のクローズ時刻の差です。数字が大きいほど制限時間がゆるい(=15km/hよりも遅く走っても間に合う)ことを意味します。

2019年と2023年を比較すると、2023年は往路(PC1〜PC7)の制限時間が短く、復路(PC8〜)の制限時間が長い傾向だったことがわかります。2泊目直後のカレ=プルゲールと600km地点のブレストでの足切りは前回より1時間以上も早い設定になっていました。

RMでは600kmを境に制限時間が緩和されるため、600kmより前の区間の制限が厳しかった2023年は前回よりも睡眠時間を確保することが難しい大会だったと言えます。

40時間以内にブレストをリスタートできた人の完走率が高いという統計があるようなので、少しでも完走率を高めるために早い時間にブレストに到着することを促しているということかもしれません

気温


PBP2015/2019/2023の最高気温・最低気温の比較(2015年の5日目は雨)

過去三回分の気温を比較してみました。大まかに言えば気温は2023>2015>2019の順に高かったようです。

2023年は全体的に気温が高かったですが、往路ヴィレンヌや往路カレ=プルゲール付近では気温10℃前後になるなど、日没後一気に気温が低下する傾向は例年と同じでした。
どの年も3日目のブルターニュ地方、往路サン・ニコラから復路ルデアックの区間で気温が低くなる傾向が見られます。

個人的に特に注意するべきだと考えているのが気温の低い3日目です(黄色背景)。2015年と2019年は最高気温が20℃台/最低気温10℃以下であり、これはほぼ日本の1月に相当します。幸い、2023年の3日目はとても暖かく日本の春のような気温でした(最高32℃/最低12℃)

2023年は全体的にかなり気温が高かったため、夏ジャージを基本にアームカバー・レッグカバー・グローブを夏用と冬用で入れ替えることでほぼ対応できました。明け方などは冬用の長袖ジャージを使った時間帯もありますがすぐに暑くなり脱いでいました。
厳冬期向けのグローブやビブショーツやインナーも持ち込んでいましたが今回は全く使うことはありませんでした。しかし、やはり気温の低下リスクは高いので日本の真冬装備は必須だと考えます。

なお、2015年の5日目は雨が降っていました。雨が降ると暖かいパリ寄りでも15℃までしか上がらないことがわかります。もしも3日目のブルターニュ地方で雨が降った場合、最高15℃以下/最低5℃以下のような気温を覚悟したほうが良さそうです。

振り返り

Keep(できたこと・継続すること)

  • 事前準備
    • Zwiftと減量
      • PBP前の半年間、平日毎日60分のZwiftを行い、同時にかなり減量したことが安定した走行ペースにつながった。低強度でも毎日ペダルを回すことはかなり効果があるようです。
  • 装備
    • VOLT800NEO
      • ブルベ用ライトの決定版。この2灯のみで1200kmを走りきることができた。(片方は途中で一回充電)
    • 電解質タブレットと胃薬
    • 厳冬期装備:今回は使わなかったもののやはり必要(前述)
    • アルファ米:仮眠後の補給に最適。美味しい。
    • その他、概ね今回の装備で問題なし
  • 走行中
    • PCの停止時間を短く意識していたこと。一回40分以内なら許容範囲。
    • 毎回仮眠所を使ったこと。回復効果が大きい
    • フジェールのマクドナルド。かなりタイムロスになるが回復効果が大きく満足度が高い

Problem(改善するべき問題点)

Try(今後挑戦したいこと)

  • 4〜5時間の貯金を確保して仮眠地点に到着すること
  • 貯金を確保する前提で、往路サンニコラ、復路ルデアックのホテルを取ることがベスト
  • DHバーの投入
  • 仮眠用の耳栓:モルターニュの仮眠室がひどかった

まとめ

往路ルデアックとブレストでのそれぞれ1時間半の停止時間が睡眠時間を大きく削り、後半の制限時間がギリギリになったり、睡眠不足により落車を招いたのが今回のPBPでした。
PBPではPCでのタイムロスが大きいことは理解していたはずなのに事前の対策を怠ったのは判断ミスでした。また、試走なしで新しいトップチューブバッグをいきなり実戦投入してしまったことが右膝の故障を招いたので、これも回避できたトラブルだと言えます。

ほんのわずかなことが大きなトラブルにつながるということを改めて痛感しました。

いくつかのミスがあったものの、半年のZwift練習で足を作っていたことや好天に恵まれるなど体調・天候ともにほぼベストなコンディションだったこともあり、ミスを挽回して完走を果たすことができました。

出走前や道中の様々な人の助けもあり、総じて人と運に恵まれたPBPだったと言えます。

 

PBPの攻略法 〜初めて走る人に向けて〜

最後に、三度走ったPBPの自分なりの攻略ポイントを整理してみます。

PBPの攻略ポイント

  1. 3泊4日ではなく4泊5日

    • 夜スタートなので1200kmにもかかわらず3泊4日ではなく4泊5日だということがPBPの難しさの一因です。早朝スタートならば3泊4日の行程になるのですが、1日目と5日目がそれぞれ120km・200kmと短く、夜が4回も来るのがPBPの特徴です。
    • 【対策】毎日の睡眠時間を稼ぐために走行ペースを早める
      • 毎日、約300kmごとに貯金を3〜4時間作る必要があり、普段のブルベよりもハイペースが求められます。PC間のネット平均速度を20km/h程度で走り切る程度の走力が必要だと言えるでしょう。
      • 2023年の前半は1日1時間・週に3〜4回のZwift練習をしてみましたが、PBPを走るのに十分な走力が得られた実感があります。PBPの年だけでもZwiftをやっておくと完走率が高まりそうです。
  2. PCのタイムロスが大きい

    • PBPのPC/WPは中学校や高校を利用しているためとても広く、コンビニに比べてタイムロスがかなり大きいものになります。PCでの停止時間を30分以内に抑えるのは、国内のコンビニ休憩を10分以内にするのと同じくらいの難しさがあると言えるでしょう。
    • 特にドロップバッグのあるルデアックでの時間の流れは早く、あっという間に1時間以上が過ぎてしまいます。広いPCを歩き回ってコントロールでサインをもらったり、ドロップバッグの場所を探したり、シャワーを浴びたり、食事をしたりと、やるべきことが多く、何をするにも移動が必要なので驚くほど時間の流れが速い場所です。
    • 【対策】PCでやることを決めておく。停止時間を極力短くする
      • あらかじめPCでやることを決めておき、停止時間を30〜40分に抑えることが重要です。PBPでは停止時間40分以内なら十分速いと言えます。
      • 特にルデアックでの行動計画を立てておくことは完走の成否を左右するほどに重要です。
  3. 往路よりも復路の貯金が少なくなる

    • 「仮眠回数が多い」+「PCでの停止時間が長い」という条件が重なることで、PBPでは「往路よりも復路の貯金が少ない」ということになりがちです。これは国内の600kmや1000kmとは異なる様相だと言えます。
    • 貯金が少ない復路での最大のリスクは眠気です。復路で眠くなってしまうと制限時間を超えるリスクがかなり大きくなるため、質の良い睡眠を得ることが必要です。
    • 【対策】必ず仮眠所かホテルで眠る
      • 芝生や廊下で寝ている人も多いですが、仮眠所やホテルを使って効率よく回復するべきだと考えます。この際、耳栓やサプリなど、睡眠導入を助けたり回復効果を高めるものがあると更に良いでしょう。
  4. 3日目の気温は「日本の真冬」に相当する。しかし「真夏日」もある。

    • 前述の通り3日目のブルターニュ地方は気温が低く、日本で言えば1月〜2月に相当する気候です。
    • 一方で2023年は例外的に気温が高く、最高気温は34℃もあり、日差しは日本よりも強いほどの過酷な暑さでした。
    • 2019年は寒さで、2023年は暑さで多くの人がDNFしていったのが印象的です。
    • 【対策】低温に対応するために十分な防寒装備を持っていくこと。真夏の対策も忘れずに。
      • 真冬の装備を用意しておくほうが良いと言えます。自分は寒さに弱いため春秋用のフルフィンガーグローブではつらく、厳冬期グローブが必須だと感じました。(2023年は未使用)
      • 一方で真夏向けのUVカバーや水と塩分の確保も必須です。
      • 「日本の1月」と「日本の7月」が交互に来るという想定で準備をしておけば問題ないと思います。

おわりに

PBPと普段の国内ブルベはタイム経過の流れが全く異なる印象があります。ピンチでもなんとかできてしまうのが国内ブルベだとすれば、安心しているといつのまにかピンチになってしまうのがPBPです。

この振り返りでは、実際の記録を元に、国内ブルベとの違い・違和感をなるべく言語化してみました。今後、PBPを走る方の参考になれば幸いです。


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PBP2023の装備品リストと反省点を書き残しておきます。
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装備・所持品全リスト
スタート時の装備

ヘルメット、キャップ、サングラス
ジャージ、レーパン、UVアームカバー、UVレッグカバー、ソックス、反射ベスト、SPDシューズ、夏グローブ(Intro Stinger 4)
スマートウォッチ(Garmin Forerunner 255 Music)、骨伝導イヤホン
首掛け防水ケース1:自作キューシート、パスポート、ブルベカード、予備クレジットカード、予備現金250ユーロ
首掛け防水ケース2予備スマートフォン

ジャージバックポケット

ポーチ(現金200ユーロ、クレジットカードx2、lightningケーブル)
iPhone

フレーム(Coner オーダーフレーム)

ライトx2(CATEYE VOLT800NEO)、テールライトx2(CATEYE OMNI3)
サイクルコンピュータx2(Garmin Edge840、Garmin eTrex30x)
ボトルx2
ツールボトル(チューブ1、RDハンガー、タイヤレバー、CO2ボンベ1、CO2インフレータ)
ベル、マッドガード(フロントのみ。SKS エスボード)
バーエンドミラー

出走前にはずれてしまい、後方確認ができず不便だった。かなりゆるい状態だったので、PBP前に新品交換したほうが良い。

出走番号フレームバッヂ

フロントバッグ(mont-bell フロントバッグ)

補給食:菓子パン2個、カロリーメイト2箱、柿ピー1袋、干し芋1袋、もみじ饅頭3個、電解質タブレット、SOYJOY1個

長期保存用の菓子パンは不味くて食べられなかった。かさばるので積載しづらく、PCで余分にパンなどを買えば良いので不要だった。
もみじ饅頭は賞味期限が短く使いづらいので別のものが良い。
電解質タブレットはすべて消費。暑かったのでかなり有効だったと思われる

モバイルバッテリーx1
チェーンロック
薬類:コムレケア、ロキソニン、エスタロンモカ、胃薬

膝故障時にロキソニンに助けられたが2錠しかなかった点が反省点。もっと多めに持っておくべき。胃薬も役立った

ケーブル類(mini-b、USB-C、lightning)、コンセント式USB充電器

USB-AからTypeCに変換するケーブルがなくイヤホンが充電できなかった

ウェットティッシュ
タイラップ数本

トップチューブバッグ(APIDURA Racing Top Tube Bag)

カメラ(RICOH GR3)

サドルバッグ(APIDURA Expedition Saddle Pack)

パンク修理グッズ:タイヤx1、チューブx2、CO2ボンベx2、フロアポンプ
輪行袋、輪行用エンド金具
雨装備:

レインジャケット上下、レインシューズカバー、ビニールテープ、防水グローブ(テムレス)、インナーグローブ、アンクルバンド、フロントバッグカバー

防寒装備:ジオライン(L/W)、アームウォーマー、レッグウォーマー、フルフィンガーグローブ、UVアームカバー(予備)、長袖ジャージ

ジオライン(M/W)を忘れたので代わりにPBP公式長袖ジャージを現地調達

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