ブレストまで何マイル?
ブルベ中心のロードバイクの走行記など

PBP2023 #9 装備リストと反省点

10月 8th 2023 in ブルベ

PBP2023の装備品リストと反省点を書き残しておきます。

装備・所持品全リスト

スタート時の装備

  • ヘルメット、キャップ、サングラス
  • ジャージ、レーパン、UVアームカバー、UVレッグカバー、ソックス、反射ベスト、SPDシューズ、夏グローブ(Intro Stinger 4)
  • スマートウォッチ(Garmin Forerunner 255 Music)、骨伝導イヤホン
  • 首掛け防水ケース1:自作キューシート、パスポート、ブルベカード、予備クレジットカード、予備現金250ユーロ
  • 首掛け防水ケース2予備スマートフォン

ジャージバックポケット

  • ポーチ(現金200ユーロ、クレジットカードx2、lightningケーブル)
  • iPhone

フレーム(Coner オーダーフレーム)

  • ライトx2(CATEYE VOLT800NEO)、テールライトx2(CATEYE OMNI3)
  • サイクルコンピュータx2(Garmin Edge840、Garmin eTrex30x)
  • ボトルx2
  • ツールボトル(チューブ1、RDハンガー、タイヤレバー、CO2ボンベ1、CO2インフレータ)
  • ベル、マッドガード(フロントのみ。SKS エスボード)
  • バーエンドミラー
    • 出走前にはずれてしまい、後方確認ができず不便だった。かなりゆるい状態だったので、PBP前に新品交換したほうが良い。
  • 出走番号フレームバッヂ

フロントバッグ(mont-bell フロントバッグ)

  • 補給食:菓子パン2個、カロリーメイト2箱、柿ピー1袋、干し芋1袋、もみじ饅頭3個、電解質タブレット、SOYJOY1個
    • 長期保存用の菓子パンは不味くて食べられなかった。かさばるので積載しづらく、PCで余分にパンなどを買えば良いので不要だった。
    • もみじ饅頭は賞味期限が短く使いづらいので別のものが良い。
    • 電解質タブレットはすべて消費。暑かったのでかなり有効だったと思われる
  • モバイルバッテリーx1
  • チェーンロック
  • 薬類:コムレケア、ロキソニン、エスタロンモカ、胃薬
    • 膝故障時にロキソニンに助けられたが2錠しかなかった点が反省点。もっと多めに持っておくべき。胃薬も役立った
  • ケーブル類(mini-b、USB-C、lightning)、コンセント式USB充電器
    • USB-AからTypeCに変換するケーブルがなくイヤホンが充電できなかった
  • ウェットティッシュ
  • タイラップ数本

トップチューブバッグ(APIDURA Racing Top Tube Bag)

  • カメラ(RICOH GR3)

サドルバッグ(APIDURA Expedition Saddle Pack)

  • パンク修理グッズ:タイヤx1、チューブx2、CO2ボンベx2、フロアポンプ
  • 輪行袋、輪行用エンド金具
  • 雨装備:
    • レインジャケット上下、レインシューズカバー、ビニールテープ、防水グローブ(テムレス)、インナーグローブ、アンクルバンド、フロントバッグカバー
  • 防寒装備:ジオライン(L/W)、アームウォーマー、レッグウォーマー、フルフィンガーグローブ、UVアームカバー(予備)、長袖ジャージ
    • ジオライン(M/W)を忘れたので代わりにPBP公式長袖ジャージを現地調達
  • バッテリー類:VOLT800バッテリーx1、単3電池2本、単4電池2本、CR2032電池1個、GR3バッテリー
  • 予備VOLT800本体x1
  • エマージェンシーシート

ドロップバッグ

  • ※往復のルデアックを境目にコースを3つの区間に分割。「補給パック」を3個用意し、2個をドロップバッグに、1個分を初期装備にいれてスタート
  • 補給パックx2
    • 補給食(3200kcal)過剰だった。2500kcal程度でよい
      • 干し芋:900kcal
      • 柿ピー:400kcal
      • 菓子パンx2:500kcal
        • 保存食系菓子パンは不味くて食べられなかった。不要
      • カロリーメイト2箱:800kcal
      • アルファ米おにぎりx2:500kcal
        • 面倒でつくらなかった。
      • その他:もみじ饅頭、ソイジョイ、電解質タブレット
    • バッテリー
      • VOLT800バッテリーx1
      • モバイルバッテリーx1
      • 単3電池2本、単4電池2本、CR2032電池1個
        • 電池持ちすぎ。途中交換はetrex用のリチウム電池2本のみで良かった
  • 予備+ルデアックでの使用分食料
    • 八戸おいしいご飯缶詰(350kcal/個)x6個
      • そのままでは不味くて食べられない。1缶のみ食べて残りはすべて捨てた。
    • アルファ米パックx2個
      • とても良かった
    • アルファ米おにぎりx2個
      • 面倒でつくらなかった。
    • カロリーメイト2箱
      • ルデアックでのタイムロスの挽回に役立った。
    • ヤマザキパンのロングライフパン(長期保存用の菓子パン) x 5
      • →不味くて食べられなかった。不要
  •  電池・バッテリー類
    • 単3電池2本、単4電池2本、CR2032電池1個
      • 電池多すぎ。不要
    • 20,000mAhのモバイルバッテリー&ケーブル各種(C、B、micro、A、Garmin Forerunner用)
  • 着替え
    • ジャージ上下2着
    • アームカバー(夏冬)、レッグカバー(夏冬)、グローブ1、キャップ1
    • 下着2、ソックス2
    • 厳冬期装備:冬ビブ、冬グローブ、Buff、カイロ数個
      • これに加えてジオライン(中厚手)を入れる予定だったが荷物に入れ忘れた。
  • 入浴系
    • タオル、バスタオル、ボディソープ、歯磨き、ボディーシート
  • 予備系機材
    • 骨伝導イヤホン
    • タイヤ1、チューブ2、CO2ボンベ2、
    • アーレンキー、RDハンガー、チェーンオイル
    • Garmin Edge810J+mini-bケーブル
  • 治療系
    • オロナイン、キズパワーパッド、絆創膏、日焼け止め
  • その他
    • 現金200ユーロ、ビニール袋、ティッシュペーパー

装備振り返り

良かったもの

  • 機材系

    • Garmin Forerunner 255 Music:
      • 心拍転送モードで1200km走り切ることができた。1200km完走した時点でのバッテリー残量は27%と十分な余裕があった。眠気の可視化やオーバーパワーを把握する意味で心拍計の存在は大きく、胸バンド型を使わずに済むのはとてもありがたい。
      • 睡眠時間が可視化されるので走行計画に活かすことができた
      • トラッカーアプリを使うことで他の参加者がPCに入った際に通知が来るので、ペースメイクにも役立った
    • CATEYE VOLT800NEO:
      • 今回はVOLT800NEOの2灯体勢。途中で一回片方を充電するだけで1200kmを完走できた
      • 同じものが2本だったので、どちらのバッテリーがなくなっているのかわからなくなった。シールなどで見分けがつくようにしておく方が良い
    • Garmin Edge840+Edge Power Mount
      • 渡航数日前にサイコンが故障したため急遽投入。大きな問題なし。
      • 雨がふらなかったので防水性能は未評価
  • 薬・サプリ・治療系

    • 電解質タブレット:
      • かなり暑かったので多めの量をすべて使いきった。体調の維持に役立った
    • 胃薬(パンシロンキュアSP錠):
      • 最後まで食欲や胃腸の問題が発生しなかった。
    • キズパワーパッド:
      • 落車時に素早く治療できた。現地調達が難しく場所も取らないので持っておくべき。
    • ロキソニン:
      • 一時的に足の痛みを消すことができた。2錠しかなかったのでもっと持っておくべきだった。
  • 補給食・サプリ類

    • 幸田商店の干し芋:
      • 長距離ブルベの必需品
    • カロリーメイト:
      • 小さくカロリーが多く栄養バランスが良いので時間がない時の補給に最適。
    • 尾西食品 アルファ米:
      • 仮眠中に戻して起床後に食べた。水で戻しても非常に美味しかった。
  • その他:

    • 巾着袋:
      • ルデアックでシャワーに行く際に袋が必要。
      • (これを盗まれた人もいるようなのでシャワー室への貴重品の持ち込みは非常に危険)

悪かったもの

  • APIDURA Racing Top Tube Bag 1L:
    • 膝に当たりそうになるので無意識的に避けてしまい、右膝故障の原因になった
  • 尾西食品 携帯おにぎり:
    • 作るのに一手間かかるので疲れて余裕のないPBPでは使わなかった
  • ヤマザキパンのロングライフパン(長期保存用の菓子パン)
    • フランスのパンに比べて不味く食べる気がしなかった
  • 八戸おいしいご飯缶詰
    • そのままでは固く・不味くとても食べられなかった(湯煎が必要)

 不要だったもの

  • 過剰な補給食:
    • 往復のルデアックを境目にコースを3つの区間に分割した場合、1区間あたりの事前準備補給食は2500kcal程度で十分。足りなければ現地調達で良い
  • 過剰な電池:
    • 途中での電池交換はetrex用のリチウム電池2本のみで問題ない。テールライトなどは新品であれば交換の必要がない。
    • etrex30xはリチウム乾電池を使用することで700km地点まで使えた。交換一回で良い

今後の改善点

  • 使わないものが多すぎた。モノが多すぎたことがルデアックでのタイムロスと睡眠時間の減少に繋がった
    • 食べなかった補給食、同じケーブル、電池類など、全体的に過剰
    • ヘルメットテールライトやテールライト2灯の電池は新品にしておけば最後まで持つので予備は不要。
  • ロキソニンをもっと大量に持っておくべきだった
    • 怪我がある場合、ロキソニンの有無が完走の成否を分ける
  • バーエンドミラーは渡航前に新品交換しておくべき
    • かなり劣化していたためか、出走前になくなっていた
  • USBA→Cケーブルを持っておくべき。
    • このケーブルがなく骨伝導イヤホンの充電に困った。4年後は不要かも
    • 途中で充電が必要だったのは骨伝導イヤホン、VOLT800NEO、iPhoneのみ
  • あると良さそうなもの
    • サーモスの保冷ボトル。冷たい水の入手が難しく常にぬるい水を飲むこととに。
    • 粉末タイプのスポーツドリンクや麦茶。水だけだったので飲み飽きた。

まとめ

概ねこの装備で大きな問題はなかったと言えますが、あえて言えば補給食・電池類が多すぎたことが改善点です。ルデアックで荷物あふれるドロップバッグの中身を探す羽目になり、大きなタイムロスに繋がってしまいました。

今回はずっと晴天だったので雨天装備を使うことはなかったですが、雨天や低気温の可能性を考慮するとレイン装備や防寒装備はこの程度は持っておくべきだと考えています。

次回は、PBP2023ブログの最後のエントリーとして、PBP2023の走行結果の振り返りをまとめてみようと思います。

(振り返りへ)

 


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Villaines-la-Juhelにて

18:26 1017.7km地点 PC11 Villaines-la-Juhel

18:26にVillaines-la-Juhelに到着。
この街は夜も昼も応援の人がとても多く勇気づけられます。街も美しく、個人的には一番好きなPCです。
PC直前に眠気に襲われて落車してしまうなど、到着時はかなり頭がぼんやりしていました。

コントロール

コントロールでサインをもらい、芝生に座り込んで落車のダメージを確認。右小指・右膝・右肘に小さな擦過傷があり、レッグカバーはやぶれてしまいましたが、傷自体はたいしたことはなさそうです。キズパワーパッドを貼り、予備のレッグカバーに交換して処置完了。念のため持っていたキズパワーパッドが役立ちました。

この右あたりでマイクを持ったDJがインタビューしていました。

休憩していると少し頭がはっきりしてきました。軽く補給してボトルに水を入れて自転車にまたがり、リスタート前に写真を撮っていたところ、マイクを持った会場DJ(?)から突然名前を呼ばれました。

「〇〇(名前)さんですね。フランス語で話せる?」
「できません」

いくつかの大きめのPCにはステージがあり、イベントやミニライブをやっています。
このPCではマイクを持ったDJがノリの良いトークをしていました。モータースポーツのサーキットのような雰囲気です。どうやらゼッケンナンバーで名前を調べて参加者に話しかけているようでした。

聞かれるままにPBPは3回目であることなど英語で話したところ、

「◯◯さんは日本からの参加者でPBPは3回目!この先もがんばってください◯◯さんー!!!」

というようなマイクでの紹介トークをしてもらえました。(フランス語なので内容は想像)

PC内に大音量で自分の名前が連呼されるのはちょっと恥ずかしいですが、良い思い出になりました。この後、日本人の方から「PCで名前呼ばれてましたねー」と言われたりしました。

このPCは40分ほどの停止時間でリスタート。
Mortagne-au-Percheまで(〜1099.0km)
Villaines-la-Juhelは19:10に出発。なんとか眠気も収まりました。足の痛みがあるので速度は出せないですが、Villaines-la-Juhel以東は起伏がゆるやかになることもあり堅調に進みます。

そしてPBP最後の夜がやってきます。

22:11 私設エイドで水補給

23:05 応援ボード

日が暮れた後、収まっていた眠気がまた襲ってきます。時折、道端の芝生に寝転んで数分間眠ったりしていました。落車する前に自ら止まらないといけない。

どうにか走り切って、23:46にMortagne-au-Perche(モルターニュ=オー=ペルシュ)に到着。

23:46 1099.0km地点 PC12 Mortagne-au-Perche

相変わらずスローペースでの走行でしたが、600km以降の制限時間緩和のおかげでなんとか3時間の貯金ができています。これならなんとか睡眠時間が取れる。すぐに仮眠所に行きます。

ここの仮眠所はマットレスが薄くペラペラで、隣の人との距離が近くいびきが気になるような場所でした。PBPで見た仮眠所の中ではかなり劣悪な環境だと言えます。スペースはかなり余っていたので参加者を一箇所に集めなければもっとゆとりがあったと思うのですが・・・。次回は耳栓を忘れずに持っていこうと思います。

お世辞にも快適な仮眠所とは言い難い場所でしたが、とても疲れていたのであっさり入眠でき、2時間ほど眠りました。

2:08 食堂

起きてすぐに食堂に行きます。モルターニュといえばこのパスタという印象。特別に美味しいわけでもないのですが、1000km走って疲れた身体にはこの食事が染み込むように入っていきます。

食堂で眠るランドヌール

なんとか最後の仮眠を終えて、PCクローズ時刻の3時ちょうどにモルターニュを出発しました。
Dreuxまで(〜1176.9km)
PCを出て走り始めると「むわっ」とした温かい空気を感じます。気温を見るとなんと22度。湿度も高くまるで日本のようです。防寒装備は全く必要ない温度でした。

しっかり眠り補給したので回復できており、心配していた雨もなく気温も良好。
ゴールまでは残りわずか120km。トラブルなくまともに走ることができればゴールできるはずです。

7:09 PBP最後の朝

最後の朝焼けが美しい。今回のPBPは天気に恵まれて快晴が続き、このような雲が出てきたのは最終日くらいでした。

仮眠直後はペースを取り戻して走ることができていますが、結局一度も長時間の睡眠を取ることができなかったので「睡眠負債」とでも呼ぶべきものが蓄積しています。
なんとか走れているものの、気を抜くとまた眠気に支配されてしまいそう。カフェイン錠剤を使用したり補給食を口に入れたりして眠気を凌いでいました。

次のPCまで30〜40kmというあたりに差し掛かった頃、日本人の方を見かけてお話していたところ、一緒に走る流れになりました。
ここで出会ったshuheiさんのペースは速く、未だ足の痛む自分がついていけるのか自信がなかったのですが、不思議と速度を上げても痛みが現れません。一人で走るよりも明らかに話しながら走る方がペースが良い。会話していると眠気も収まりました。地獄に仏とはこのことです。

shuheiさんのおかげでペースアップして、あっという間にDreux(ドルー)に到着。

7:48 1176.9km地点 PC13 Dreux

8:07 最後の補給

残り距離はわずか44kmですが、念のため少し多めに最後の補給を取りました。Dreuxも40分ほどの停止時間でリスタート。
ゴール:Rambouilletまで(〜1220km)

8:51

この後もshuheiさんと共に走ることに。疲れ切った最後の区間に共に走る人がいるのは非常にありがたい。会話をしながら楽しく進みます。

この頃、エアロポジションの姿勢にすると足の痛みが出づらいことに気づきました。DHバーは付けていないのですが腕をハンドルバーの上に置いて、あたかもDHバーを握っているような姿勢にしてみると痛みなくスピードも出せてとても楽。
今回のPBPからDHバーが解禁され多くの人が使用していましたが、信号なくずっと走り続けるPBPとの相性はかなり良い気がしました。

9:13 ようやく現れる平坦区間

Dreux以東のコースは平坦基調。時折、Villaines-la-Juhel以西には見られなかったようなフラットな景色が現れます。

「こういう景色はVillaines-la-Juhelより先にはなかったですよねー」

とshuheiさんと話しながらリラックスして進みます。

いつしか周囲を走るランドヌールの表情も緩み、にこやかに談笑しながら走る人が目立ちます。残り距離と時間を考えればもう大丈夫。皆そう思っているのでしょう。

そして・・・

10:48 ゴール!

そして、ついにゴールすることができました。
2015年の設備は簡素でくぐるゴールゲートもなく、直前に雨が降っていた影響で応援の人もほとんどいないという寂しいゴールでしたが、今回は多くの応援の人達が見守る中、ガッツポーズしながらこのゲートをくぐることができました。

最後まで眠気が残り足取りも重かったですが、一緒に走ってくれた方のおかげで余裕を持って完走することができました。最後の区間を共に走ったshuheiさんとはゴールのタイミングではぐれてしまい、その後お話できなかったのは残念です。

10:57 完走サイン

完走メダル

タイムは87:58。無事に時間内に完走してメダルをもらうことができました。

前回の2019年はDNF、前々回の2015年は一部PCの到着が大幅に時間超過しての完走でした。3回目にして初めてすべてのPCを制限時間内に通過して完走することができました。
2019年のDNFはショックが大きく、しばらくは思い返したくもないほどでしたが、ようやく前回のリベンジを果たすことができました。感無量です。

最後のDreuxからゴールの間で一瞬雨が降ったものの、基本的にはずっと晴天で一度も雨装備を使うことはありませんでした。ゴール後30分ほどすると初めてまともに雨が降り始めたので、運良く雨を回避することができたようです。

例年のような寒さもなく、天候と運に恵まれたPBPでした。

完走後。

記録としての走行編はここまでです。次回以降は、今回のPBPでうまくいったことや問題点、三度のPBP出走経験を踏まえたPBPの攻略法などをまとめてみようと思います。

(振り返りへ)

※参考:PBPゴールゲートの様子(はまいぬさんの動画)
https://twitter.com/hamainu0/status/1694646926690443480

Previous Entry

Pairs-Brest-Pairs Randonner2023への挑戦は87時間58分で完走という結果で終えることができました。

PBPの参加は今回で3回目。簡単に完走できたわけではないのですが、これまでで最も安定して走ることができました。三度も走り、おぼろげながらPBPを完走するコツのようなものが見えてきた気がします。

PBPブログの最後のエントリーとして、全体の振り返りと自分なりの攻略法を書き残して置こうと思います。

[toc]

結果分析

ペース・マージン推移

区間ペース・停止時間・仮眠所での睡眠時間※区間速度はPCでの停止時間を含まない「ネット平均速度(km/h)」。
上記は全体の走行ペースと仮眠所での睡眠時間。夜スタートなので5日間の行程です。(ヴィレンヌまで1日目扱い)
走行ペースの問題点は2箇所。

ルデアックとカニユエルでのタイムロス(黄色背景)

往路ルデアックへの到着時には4時間52分の貯金があるが、2日目の仮眠ポイントであるサン・ニコラでは貯金が3時間14分に減っている。
原因はルデアックとカニユエル(シークレット)でのタイムロス。

膝故障によるブレストでのタイムロスとその後のスローペース(オレンジ背景)

600km地点での右膝の故障により、ブレストに1時間32分も滞在して26分の借金スタート。
その後の区間は足の不調から速度が低下(全区間で最も遅い15km/hになっている)

この結果、3日目復路ルデアック到着時の貯金は2時間47分しか確保できませんでした。
復路ルデアックは睡眠時間の確保を優先したために1時間の借金スタートになり、その後の復路タンテニアックはPCクローズの10分前に到着という大ピンチの状態に陥りました。

貯金の推移

上記は貯金の推移をグラフ化したものです。縦軸はPCクローズに対する貯金時間、横軸は経過時間。赤線が貯金の推移、緑の帯は仮眠所での滞在時間。赤い帯は仮眠していないのに長時間停止してしまったPCです。
全体的にブレストより左側の方が山が高く、往路よりも復路は貯金を確保できていないことがわかります。

1泊目のヴィレンヌ到着時点では4.5時間の貯金がありますが、2泊目以降は仮眠所到着時の貯金が3時間前後しかありません。1泊目も貯金を残すために短時間睡眠にしたため、結局4泊とも2時間〜2時間半程度しか眠っていない状態でした。

スタート前に昼過ぎまでホテルで仮眠をとっていたので、1泊目は短時間の睡眠で問題ないのですが、2泊目以降は毎日3時間以上眠りたかったところです。前述の通り、ルデアックでのタイムロスが2泊目の睡眠時間を削り、足の故障の影響で3泊目も睡眠時間を確保できませんでした。
仮に往路ルデアックとカニユエルで素早く動けていれば5時間以上の貯金を持ってサン・ニコラに到着できたはずであり、ここで4時間の睡眠がとれていれば後半かなり楽になったと思われます。

前回大会との比較

PCクローズ時間の差
PBP2019とのPCクローズ時間の差

上記はPCごとの15km/hペースでの仮想クローズ時間と、実際のクローズ時刻の差です。数字が大きいほど制限時間がゆるい(=15km/hよりも遅く走っても間に合う)ことを意味します。
2019年と2023年を比較すると、2023年は往路(PC1〜PC7)の制限時間が短く、復路(PC8〜)の制限時間が長い傾向だったことがわかります。2泊目直後のカレ=プルゲールと600km地点のブレストでの足切りは前回より1時間以上も早い設定になっていました。
RMでは600kmを境に制限時間が緩和されるため、600kmより前の区間の制限が厳しかった2023年は前回よりも睡眠時間を確保することが難しい大会だったと言えます。
40時間以内にブレストをリスタートできた人の完走率が高いという統計があるようなので、少しでも完走率を高めるために早い時間にブレストに到着することを促しているということかもしれません

気温

PBP2015/2019/2023の最高気温・最低気温の比較(2015年の5日目は雨)

過去三回分の気温を比較してみました。大まかに言えば気温は2023>2015>2019の順に高かったようです。

2023年は全体的に気温が高かったですが、往路ヴィレンヌや往路カレ=プルゲール付近では気温10℃前後になるなど、日没後一気に気温が低下する傾向は例年と同じでした。どの年も3日目のブルターニュ地方、往路サン・ニコラから復路ルデアックの区間で気温が低くなる傾向が見られます。
個人的に特に注意するべきだと考えているのが気温の低い3日目です(黄色背景)。2015年と2019年は最高気温が20℃台/最低気温10℃以下であり、これはほぼ日本の1月に相当します。幸い、2023年の3日目はとても暖かく日本の春のような気温でした(最高32℃/最低12℃)
2023年は全体的にかなり気温が高かったため、夏ジャージを基本にアームカバー・レッグカバー・グローブを夏用と冬用で入れ替えることでほぼ対応できました。明け方などは冬用の長袖ジャージを使った時間帯もありますがすぐに暑くなり脱いでいました。厳冬期向けのグローブやビブショーツやインナーも持ち込んでいましたが今回は全く使うことはありませんでした。しかし、やはり気温の低下リスクは高いので日本の真冬装備は必須だと考えます。
なお、2015年の5日目は雨が降っていました。雨が降ると暖かいパリ寄りでも15℃までしか上がらないことがわかります。もしも3日目のブルターニュ地方で雨が降った場合、最高15℃以下/最低5℃以下のような気温を覚悟したほうが良さそうです。

振り返り

Keep(できたこと・継続すること)

事前準備

Zwiftと減量

PBP前の半年間、平日毎日60分のZwiftを行い、同時にかなり減量したことが安定した走行ペースにつながった。低強度でも毎日ペダルを回すことはかなり効果があるようです。

装備

VOLT800NEO

ブルベ用ライトの決定版。この2灯のみで1200kmを走りきることができた。(片方は途中で一回充電)

電解質タブレットと胃薬
厳冬期装備:今回は使わなかったもののやはり必要(前述)
アルファ米:仮眠後の補給に最適。美味しい。
その他、概ね今回の装備で問題なし

走行中

PCの停止時間を短く意識していたこと。一回40分以内なら許容範囲。
毎回仮眠所を使ったこと。回復効果が大きい
フジェールのマクドナルド。かなりタイムロスになるが回復効果が大きく満足度が高い

Problem(改善するべき問題点)

試走なしで新装備を実戦投入するべきではない

慣れないトップチューブバッグの使用が右膝の深刻なトラブルを招いた

ルデアックでのタイムロス

補給食が多すぎてドロップバッグの中から目的のものを探すのに手間取ってしまった。
ドロップバッグから何を取り出して交換するのかなどタスクリストを作っておくべきだった。(晴天時/雨天時/トラブル時など数パターン)

ロキソニンが少なかった

ロキソニンが足のトラブルを一時的に解決。持っていたことは良かったが、十分な量ではなかった。

Try(今後挑戦したいこと)

4〜5時間の貯金を確保して仮眠地点に到着すること
貯金を確保する前提で、往路サンニコラ、復路ルデアックのホテルを取ることがベスト
DHバーの投入
仮眠用の耳栓:モルターニュの仮眠室がひどかった

まとめ

往路ルデアックとブレストでのそれぞれ1時間半の停止時間が睡眠時間を大きく削り、後半の制限時間がギリギリになったり、睡眠不足により落車を招いたのが今回のPBPでした。PBPではPCでのタイムロスが大きいことは理解していたはずなのに事前の対策を怠ったのは判断ミスでした。また、試走なしで新しいトップチューブバッグをいきなり実戦投入してしまったことが右膝の故障を招いたので、これも回避できたトラブルだと言えます。

ほんのわずかなことが大きなトラブルにつながるということを改めて痛感しました。

いくつかのミスがあったものの、半年のZwift練習で足を作っていたことや好天に恵まれるなど体調・天候ともにほぼベストなコンディションだったこともあり、ミスを挽回して完走を果たすことができました。
出走前や道中の様々な人の助けもあり、総じて人と運に恵まれたPBPだったと言えます。

 

PBPの攻略法 〜初めて走る人に向けて〜

最後に、三度走ったPBPの自分なりの攻略ポイントを整理してみます。

PBPの攻略ポイント

3泊4日ではなく4泊5日

夜スタートなので1200kmにもかかわらず3泊4日ではなく4泊5日だということがPBPの難しさの一因です。早朝スタートならば3泊4日の行程になるのですが、1日目と5日目がそれぞれ120km・200kmと短く、夜が4回も来るのがPBPの特徴です。
【対策】毎日の睡眠時間を稼ぐために走行ペースを早める

毎日、約300kmごとに貯金を3〜4時間作る必要があり、普段のブルベよりもハイペースが求められます。PC間のネット平均速度を20km/h程度で走り切る程度の走力が必要だと言えるでしょう。
2023年の前半は1日1時間・週に3〜4回のZwift練習をしてみましたが、PBPを走るのに十分な走力が得られた実感があります。PBPの年だけでもZwiftをやっておくと完走率が高まりそうです。

PCのタイムロスが大きい

PBPのPC/WPは中学校や高校を利用しているためとても広く、コンビニに比べてタイムロスがかなり大きいものになります。PCでの停止時間を30分以内に抑えるのは、国内のコンビニ休憩を10分以内にするのと同じくらいの難しさがあると言えるでしょう。
特にドロップバッグのあるルデアックでの時間の流れは早く、あっという間に1時間以上が過ぎてしまいます。広いPCを歩き回ってコントロールでサインをもらったり、ドロップバッグの場所を探したり、シャワーを浴びたり、食事をしたりと、やるべきことが多く、何をするにも移動が必要なので驚くほど時間の流れが速い場所です。
【対策】PCでやることを決めておく。停止時間を極力短くする

あらかじめPCでやることを決めておき、停止時間を30〜40分に抑えることが重要です。PBPでは停止時間40分以内なら十分速いと言えます。
特にルデアックでの行動計画を立てておくことは完走の成否を左右するほどに重要です。

往路よりも復路の貯金が少なくなる

「仮眠回数が多い」+「PCでの停止時間が長い」という条件が重なることで、PBPでは「往路よりも復路の貯金が少ない」ということになりがちです。これは国内の600kmや1000kmとは異なる様相だと言えます。
貯金が少ない復路での最大のリスクは眠気です。復路で眠くなってしまうと制限時間を超えるリスクがかなり大きくなるため、質の良い睡眠を得ることが必要です。
【対策】必ず仮眠所かホテルで眠る

芝生や廊下で寝ている人も多いですが、仮眠所やホテルを使って効率よく回復するべきだと考えます。この際、耳栓やサプリなど、睡眠導入を助けたり回復効果を高めるものがあると更に良いでしょう。

3日目の気温は「日本の真冬」に相当する。しかし「真夏日」もある。

前述の通り3日目のブルターニュ地方は気温が低く、日本で言えば1月〜2月に相当する気候です。
一方で2023年は例外的に気温が高く、最高気温は34℃もあり、日差しは日本よりも強いほどの過酷な暑さでした。
2019年は寒さで、2023年は暑さで多くの人がDNFしていったのが印象的です。
【対策】低温に対応するために十分な防寒装備を持っていくこと。真夏の対策も忘れずに。

真冬の装備を用意しておくほうが良いと言えます。自分は寒さに弱いため春秋用のフルフィンガーグローブではつらく、厳冬期グローブが必須だと感じました。(2023年は未使用)
一方で真夏向けのUVカバーや水と塩分の確保も必須です。
「日本の1月」と「日本の7月」が交互に来るという想定で準備をしておけば問題ないと思います。

おわりに
PBPと普段の国内ブルベはタイム経過の流れが全く異なる印象があります。ピンチでもなんとかできてしまうのが国内ブルベだとすれば、安心しているといつのまにかピンチになってしまうのがPBPです。
この振り返りでは、実際の記録を元に、国内ブルベとの違い・違和感をなるべく言語化してみました。今後、PBPを走る方の参考になれば幸いです。

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